すべての美人は名探偵である

すべての美人は名探偵である (カッパノベルス)

すべての美人は名探偵である (カッパノベルス)

「すべての美人は名探偵である」鯨統一郎(2004)☆☆★★★
※[913]、国内、現代、小説、ミステリー、歴史ミステリー、徳川家光、童謡

鯨統一郎という作家は、どうなのだろう。
彼を知ったのは、彼のデビュー作「邪馬台国はどこですか?」。バーを舞台にし、有名な歴史の史実を題材にした気軽に読める短編集。色々な歴史の珍説、奇説、新説をバーテンと常連の会話の中で描く。とても楽しく読めた記憶があった。今回の書評を書くにネットで調べてみると、非常に好意的な意見の多い本であった。

「歴史ミステリー」というジャンル。史実をひとつのテーマにして描かれる作品で、史実を新しい視点で解釈することをひとつの目的としている。鯨統一郎は僕の知る限り、このジャンルの作品ばかり書いている。彼の作品をいくつか読んでいるが、歴史が好きで、史実をいじるのが好きなんだな、といつも感じる。

今回の作品のテーマは「徳川家光」と童謡「ずいずいずっころばし」の謎。
歴史の謎解きは、とてもおもしろい・・はずなのに、どうもいただけない。なんか軽すぎる。なぜ、美人歴史学者が主人公でなければならないのか。安易な設定のミスコンに参加しなければいけないのか。荒唐無稽という言葉がぴったり。歴史の謎解きと物語も、決してうまくからんでいるとは言えない。せっかくの史実の新解釈も、この作品では、な。

歴史ミステリーは、割と重めの作品が多い。ミステリーの骨格となる、史実の謎解きを作ることが大変であるからだろう。そうした中での鯨統一郎の軽みは貴重である。しかし、軽すぎるのもいかがなものか?最近ちょっと軽すぎないか、鯨統一郎

蛇足:歴史ミステリーは好きなジャンル。最近あまり流行らないが、一時の井沢元彦「猿丸幻視行」「義経はここにいる」のような作品が読みたいなぁ。