ぐるりのこと

ぐるりのこと

ぐるりのこと

「ぐるりのこと」梨木香歩(2004)☆☆☆★★
※[914]国内、現代、エッセイ

ちょっと読みづらかった、というのが本音。
自分という内側と、世界という外側と、そのあいだにある「ぐるり」を静かに見つめているエッセイ。
文章が固めで、素直にはいりこめなかった。それは、自分の想いを、間違いなく伝えようとする、誠実さ。エッセイというと、割と読みやすく、共感しやすく書かれるものが多いが、この作家は、まごうことなく自分を伝えようとする姿勢のため、ややこしくなってしまった。

実は、ぼくの思考パターンと似ていた。わかりやすい文章は、肯定することのみを主張した文章。
本エッセイは、誠実に伝えようとするあまり、そこに逡巡する思いまで書いてしまったので、本当に一番強く訴えたいものが何なのかわかりにくくなってしまった。言葉ひとつの選び方、使い方にもとても気を使っていることは分かるのだが、。多様性を認め、ひとつの側面のみを肯定することに違和感を感じる。彼女の、その気持ちはとても理解できる。でも、彼女の作品を楽しみにしている、多くの読者に対してはどうなのだろうか?
と、思ったとき、これがエッセイであることに思い当たった。彼女は、これを物語という作品と別の、エッセイという形態をして語った。ならば、分かりやすい必要はない。その瞬間、ぼくが評価に利用している星の数という評価が、この本には無意味だということに気づいた。今回は、素直に評価不能

すべて読み終わったとき、もっとゆっくり時間をかけて、もう一度読んでみたいと思った。
カッコを使った、言葉の選び方、使い方は、きちんと時間をかけて読んだとき、また新たな地平が見えてくるのではないか、そんな気がした。

しかし、作家によって、エッセイと小説が別なタイプの人って多いね。椎名誠とか、伊集院静とかも、エッセイと小説、重ならないもんなぁ。