おしゃべり怪談

おしゃべり怪談

おしゃべり怪談

「おしゃべり怪談」藤野千夜(1998)☆☆☆★★
※[913]、国内、現代、小説、文芸、ホラー

シュールでポップで、少しエキセントリック。
てな、とこか、藤野千夜。物語というより、雰囲気を楽しむ小説。本書で野間文芸新人賞を受賞。本書は、表題作「おしゃべり怪談」「BJ」「女生徒の友」「ラブリープラネット」の中、短編、四編から成る。「おしゃべり怪談」のタイトルはニヤリ。でも、全然違うんだ、某少女マンガとは。

「BJ」
新婚夫婦の住むマンションの一室に、何かがいる気配。幽霊か?。夫のタカオは感じることができないが、ハナコにわかる。そんな日常風景が語られる。

「おしゃべり怪談」
会社帰りに雀荘で夜を徹して麻雀を打っていた四人の女性が、そのまま若いおしゃべり男に包丁をつきつけられ、延々、麻雀を打つことを強制させられる。その間、包丁男は好き勝手なことばかり言っている。そして、最後は・・。
スゴク衝撃的なラストなのだが、ショックというより、うすら恐ろしいという感じ。淡々、淡々と描かれる。

「女生徒の友」
中学生ヤスコのモノローグで語られる。母さんが親戚の結婚式に出かけ留守にしている間に、ヤスコは微熱と言っていいほどの発熱で学校を休む。そんなヤスコの一日を、やはりこれも淡々、淡々と描く。

「ラブリープラネット」
一人暮らしの大学生キリコの兄がいなくなったのは九年前のこと。名門の県立高校に入学して、1ケ月で兄は姿を消した。そして、六年ぶりに再会した兄は、姉さんになっていた。普通の小説なら女になった兄を通した、家族の悲喜こもごもが書かれるのだろうが、藤野千夜は、主人公キリコの生活をただ淡々と書くだけ。キリコと、恋人ホリイ、キリコの飼うハナブサと名づけられた金魚の話。キリコと姉になった兄との話。こんなものかもしれない、日常なんて。

キーワードは「淡々」かと思うくらい、全作品淡々と日常を描く。何か不思議な、言葉では表現できない雰囲気を持った作品たち。「ラブリープラネット」はちょっといい。この中では一番オススメ。「女生徒の友」も「おしゃべり怪談」も悪くない。