フェッセンデンの宇宙

snowkids992005-05-30

「フェッセンデンの宇宙」エドモンド・ハミルトン (2004)☆☆☆☆★
※[933]、海外、小説、SF、短編

表紙の可愛い絵に騙されてはいけない。
これは、E.E.スミスと並ぶ、古典スペース・オペラの巨匠エドモンド・ハミルトンの短編集。氏の「キャプテン・フューチャー」「スター・ウルフ」。スミスの「スカイ・ラーク」「レンズマン」で育った少年たちは、ニヤリな作家。本書の出版された2004年はハミルトンの生誕100周年だそう。

決して、SFという分野では、評価は高いと言えないハミルトンだが、わくわくどきどき、という物語の楽しさを教えてくれたことは、忘れられない。そんなハミルトンの、スペース・オペラとは別な面を持った短編を集めたのが本書。表題作「フェッセンデンの宇宙」「風の子供」「向こうはどんなところだい?」「帰ってきた男」「凶運の彗星」「追放者」「翼を持つ男」「太陽の炎」「夢見る者の世界」の9編からなる。1928年から1962年までに発表された作品。古いもので80年近く前、新しくても40年と少し前の作品。

表題作の「フェッセンデンの宇宙」は、箱庭宇宙をテーマとした作品。いわゆる、この宇宙は誰かの創造した実験ではという物語。さすがに、あまりに古典的なテーマ、話であり、ちょっと古臭さを感じた。しかし、他の作品を読み進めるに従い、古典的名作は普遍だなと思うようになった。スペース・オペラと違った、ペーソス溢れる短編をしっかり味わせてもらった。
「追放者」「翼を持つ男」がオススメ。「追放者」は、いかにもアメリカ的なお話。いま、読むと少し古臭さを感じるが、それはそれで、いい味を出している。「翼を持つ男」これも、いまとなってはありがちな話かもしれない。翼を持つことへのあこがれ、自由を得ることの代償、少し物悲しいところがいい。

しかし本書で一番のオススメは、翻訳者であり、編者である中村融の「編訳者あとがき」。これがあることで、本書がとても読みやすい一冊となった。

久しぶりに、センス・オブ・ワンダースペース・オペラの世界を覗こうかな。

蛇足:「キャプテン・フューチャー」は、昔NHKでアニメになったのだが、本書を読み始めて以来、その主題歌が頭の中をぐるぐるしてる。〜子どものころは、空を飛べたよ〜♪