地獄のババぬき

地獄のババぬき 『このミス』大賞シリーズ

地獄のババぬき 『このミス』大賞シリーズ

「地獄のババぬき」上甲宣之(2005)☆☆☆★★
※[913]、国内、現代、小説、ミステリー、ホラー、B級、ババぬき、コンゲーム、心理学、このミス大賞

第一回[このミス大賞]で各賞受賞を逃したものの、話題作として出版された「そのケータイはXXで」http://d.hatena.ne.jp/snowkids99/20050603/1117774089の続篇。前作の登場人物たちが再集結、そして新たに加わるひと癖もふた癖もあるキャラクターたち。とにかくキャラクターの性格付けがきちんとなされ、とても生きている。なのに、作品としては評価できない。もったいない。

前作の世間を騒がせた阿鹿里村の生き神事件より生還した、しよりと愛子。今度は卒業旅行のため東京行きの夜光バスに乗った。そのバスでバスジャック事件に遭遇。犯人の要求は、乗客と特殊ルールのババ抜きを行い、勝ち抜けた者を解放する。25時間テレビで生中継される地獄のババぬきが始まった。
プレイヤーは、しより、愛子、前作で愛子と殺戮劇を演じ、逮捕されたレイカ。愛子への復讐のために刑務所を脱獄してきたのだ。そして、レイカに拉致され、現場に連れてこられた、しよりの友人弥生。弥生は前作で携帯電話を通じ、しよりの脱出に手を貸した心理学の達人。そのほか背後霊に憑依された少女。宝石強盗の逃走途中に、同じバスに乗り合わせた世界に名を知られた大泥棒。その相棒の女性魔術師。最後に、バスジャックの犯人であり、元放送作家の博打王の8人。
それぞれの能力を最大限に活かし、相手を騙し、相手のうそを見抜き、ばば抜きを勝ち抜け!

マンガ「カイジ」のような、心理戦と、計算による命をかけたカードゲーム。あるいは松岡圭祐の作品にも似ている。作者の持つマジック、心理学の知識を駆使し、描かれるカードによる死闘。その知識は、嘘ではない。前作同様、語り手を切り替え、それぞれの視点から描く手法。確かにおもしろくないわけではない。
しかし、手放しでおもしろいと言い切れない。キャラクター、設定ともにとてもうまい。愛子に復讐を誓うレイカに至っては、前作に比べ、ひとりの読者としてとても魅力あふれキャラクターになったと思う。それなのに、なぜ?

設定、キャラクターを活かしきれていないことに、今回ももどかしさを覚えつつ、次作に期待。次作も、しより、愛子、弥生、そしてレイカ、それからすっかりどこかへ置き忘れられたしよりの恋人モノノベさん(!)が活躍することを期待する。
もっとハチャメチャに!king of ばかミスを目指せ!

本書は、必ず前作「そのケータイはXXで」を読んでから、読むべき。

蛇足:冒頭にまたもや新型携帯のウンチクが語られたときはビックリ。また、同じパターンかと・・。しよりちゃん、いい加減、非常用充電器を持ちなさい