しかたのない水
- 作者: 井上荒野
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/01/26
- メディア: 単行本
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[913]国内、小説、現代、短編、フィットネスクラブ、愛憎
井上荒野を初めて読んだ。作家井上光晴の長女だそうだ。だからどうなのかといえば、何もない。完全な思い違い。荒野という名前を男と勘違いして、冒険小説を期待して予約した。どこかで手違い。手にした本は水色の背景に、白い水着の女性が背泳ぎをしている。普通なら手に取らない。誰かが薦めてくれなければ手に取らない本。内容もそう。
とあるフィットネスクラブを舞台にした、短編六編からなる。
それぞれの主人公がフィットネスクラブという場を通して、すれ違い、交差する。作品はそれぞれ単独に成立するオムニバス形式。それぞれの作品が、うまく、読ませる。ただ、個人的には共感ができない。そこが評価につながらない理由。
フィットネスクラブという裸に近い姿で、それぞれに下心を抱きながら集う大人たち。そこにはヒーローもいなければ、ヒロインもいない。とるに足らない人々のとるに足らない生活。大きな事件も起きない。いや、それぞれの主人公にとって大きなことなのかもしれないが、作家の突き放した描写が、それを感じさせない。あまりに平凡な日常。そこに爽快感はない。閉塞感、疲労感、そんなものを感じてしまう。
ぼくは、単純かもしれないが、どきどきやわくわくが好きなんだ。そういうことを再確認させてくれた作品。こういう作品は否定しないし、あるということも認めもする。たまにさらっと読むのも良い。しかし、やっぱり主観的には評価しない。