泣き虫弱虫諸葛孔明

泣き虫弱虫諸葛孔明

泣き虫弱虫諸葛孔明

泣き虫弱虫諸葛孔明酒見賢一(2004)☆☆☆☆★
※[913]、国内、小説、中国、三国志諸葛亮孔明劉備

タイトルから想像されたのは、やせっぽちで弱虫で泣き虫な少年諸葛孔明が、成長していき三国志の英雄になっていく、三国志のアナザー・ストーリー。
ネットの本読み人仲間の間で話題になっていていた作品。やっと入手。読了。いやぁおもしろかった。すごくおもしろかった。
以下ネタバレ含む可能性大なので、本作品未読の方は注意して読まれたし。

嘘つきである、このタイトル。孔明は全然泣き虫でも弱虫でもない。しいていえば「嘘泣き諸葛孔明」か。そこにいるのは、聡明で弁もたつが、過剰な自己意識をもった、奇人、変人。一歩間違えばとんだ屁理屈野郎。いや、もはやそのものか。三国志のアナザー・ストーリーというより、楽屋落ち。調子にのった作者酒見賢一が、そこかしこに登場して茶々をいれるのだが、それがまた可笑しい。もうクスクス、クスクス笑っちゃう。
諸葛孔明を主人公にしているが、周りの人物も相当おかしい。三顧の礼をもって、孔明を軍師に迎えた劉備も、酒見賢一にかかっちゃうとホントただの変なオヤジ。
500ページ弱の作品である。しかし、あらすじはといえば、三国志では、優秀な軍師として描かれる諸葛孔明を、聡明だが思い込みの激しい変人として描き、醜女の嫁(でもすごく優秀)をもらって、天下の将軍劉備(これもちょっとヘンな人)に三顧の礼をもって迎えられるまでを描いただけ。物語であるが、物語でない。まさに楽屋落ちの物語。

三国志のファン、マニアは怒っちゃうのか、それともやはりクスクス笑っちゃうのか?自分が三国志をきちんと読んだかどうかの記憶も曖昧なぼくであるが、この作品はおもしろかった。ぜひ三国志もきちんと読みたいなぁと思ってしまった。

多くを語るより、とにかく読んでほしい一冊。でも物語としては、残念ながら弱い。

酒見賢一は、ぼくが勝手にに不遇の文学賞と呼んでいる「日本ファンタジーノベル大賞」の第一回大賞を「後宮小説」で受賞し、デビューした。しかしこのデビュー作もぶっとんでた。なんせ舞台は「後宮」である。これをファンタジーノベルとして受賞させた審査員もスゴイが、さらにアニメにしてTVで放映したりしてるのだから、TV局もスゴイ。本作もアニメ化に向いていそう。