リレキショ

リレキショ

リレキショ

「リレキショ」中村航(2002)☆☆☆★★
※[913]、国内、現代、小説、文芸、文学、青春、文藝賞受賞作

本読み人仲間mamimixさんのオススメの一冊。図書館に予約して、借りてみた。
ごめん。よく、わからない。本文にある歌の雰囲気を知りたくて、物置からフォークギターを引っ張り出して、コード押さえてみたりもしたのだけど、うむむむ。悪くはない、淡々と進む物語。不思議な人間関係。でも、残念ながら僕の心の琴線は震わせてくれるまでは、いかなかった。余韻はあるのだが・・。

「姉」に拾われたぼくは、半沢良として、姉と不思議な生活を送る。履歴書を作り、深夜のガソリンスタンドでマジメに淡々とバイトをし、リレキショを創り、半沢良を記録する。姉と、姉の親友ヤマザキと過ごす食卓。不思議な団欒。
ある日、主人公にラブレターが手渡される。深夜のスタンドで、ヘルメットをかぶった女性から。手紙にはウルシバラと名乗る、浪人生の深夜の生活と主人公への想いが綴られていた。彼女は、その後も慎重に、ぎこちなく主人公に手紙を手渡す。一回に100円に満たない原付バイクへの給油の際に。そして、彼女の提案で、主人公と彼女はデートする。夜中の神社への参道で、街を見下ろしながら・・。

主人公に心の傷があるのを想像するのは難くない。自分の来歴を隠し、新たな半沢良を生きる。護身術を少しづつ、着実に身につけていく。ファースト・フードで出会った昔の知人。傷を隠し、癒しながら生きている半沢良。しかし、そのことがとてもうまく隠されており、伝わらない。分かるのだけれど、ぼくの心に伝わらない。
ウルシバラとの未来が、もう少し明るい、温かな予兆を見せてくれるとよいのだけど。ぎこちないほどのカップルに、読者も思わず応援したくなるような、そんな気持ちに。ウルシバラの客観的描写があまりに少ないのも、共感を覚えない理由か。ヘルメットで顔を隠していても、華奢な体つきとか、行動に現れる愛嬌とかあればもう少しよかったのでは。実は、手紙のなかで、主人公のことを勝手に想像するくだりは、ちょっとストーカーかとも思ってしまった。
設定もいい、力まず淡々と書かれているもいい、あとはもう少し何かが欲しいといったところ。

蛇足:mamimixさんの書評 を読んでポイントがわかった。「手紙」だ。この世界に、すんなりはいれるかどうかはここにかかっていた。初対面の人に送る手紙にしては、長すぎるのではと僕が感じた違和感が、mamimixさんのツボ。これはぜひ、mamimixさんに奇天烈な手紙をもらって、デートに誘ってもらわねば、だ(笑。