SPEED

SPEED (The zombies series)

SPEED (The zombies series)

「SPEED」金城一紀(2005)☆☆☆☆★
※[913]、国内、現代、小説、青春、ゾンビーズ
http://kanata-kanata.at.webry.info/200509/article_24.html
いま、わたしのまえに憎むべき敵が立っている。頼りにしていた朴舜臣は、敵の足元に倒れている。でも、後悔なんてしていない。一瞬だけ、どうしてこんなことになってしまったんだろうとは思ったけど・・。
これは、わたしの生まれて初めての冒険の話だ。

レヴォリューションNo.3」「フライ、ダディ、フライ」に続く、愛すべき連中ゾンビーズの登場する青春小説第三弾。前作の中年サラリーマンと代わり、本作は女子高校生が主人公。ふとしたきっかけでゾンビーズの面々と知り合い、仲間になり、事件にまきこまれ成長していく。何度も言うが、青春小説は好きだ。大好きだ。本作もオススメ!
でも次作につながるなら、そろそろ、彼ら自身の話も読みたいな。

有名なお嬢様進学校に通う主人公岡本佳奈子。家庭教師の女子大生彩子さんが自殺した。彼女の自殺は大学教授との不倫に原因があったのか。事件に巻きこまれる佳奈子。工事現場に連れ込まれたところを救世主に救われた。そう、その救世主こそ南方をはじめとするゾンビーズの面々。
佳奈子を襲ったのは、自殺した彩子さんの通っていた有名一流大学の永生大学の学生たち。ゾンビーズたちの調べによれば、佳奈子が事件の直前に会った中川という学園祭実行委員長が黒幕。学園祭に流れる巨額の金、そして大学を舞台にした権力を求める人々の動き。すべての鍵を握るのが中川。
彩子さんの仇を討つべくゾンビーズとともに行動する佳奈子。そして、佳奈子たちの作戦は始まる・・。

主人公の佳奈子は、電車の中で隣に座った痴漢の男性に手を握られ、じっとしたまま何もできない。男の子の前でハンバーガーを大きな口を開けてたべることが恥ずかしい。そんな女の子。いまどきの女子高生とは思えないようだが、でも、そんな女子高の女の子って、確かにいるよね。
大学のサークルに一人の女子高出身の女の子がはいってきたときのことを思い出す。部室のベンチにひとり座り、しばらくしたらじわっと、目に涙を貯め、こぼれる涙。え?え?どうしたの?僕らが慌てふためき尋ねると、男の人がいっぱいでこわい・・。ほんの七年前は、共学の公立の小学校を卒業したはずなのに、どうして?
決して、男の子に媚を売るタイプでもなかった。ただ、自分がどうしていいかわからない、そんな感じ。この作品の主人公佳奈子もそう。そして、そんな佳奈子もゾンビーズとの出会いで変わっていく。
男の子とつきあっていると誤解され、クラスで無視される。つい、この前までみんなと同じでいることに安心していたはずなのに、今は無視されていても気にならない。すべきことがあるから。

事件が終わったあと、佳奈子はゾンビーズと敢て、会わない。会いたいといえば、会ってくれる彼らに。
私は、お豆だから。彼らは私に合わせてくれる。そんな佳奈子に、ゾンビ−ズの仲間アギーのお母さんは「カナコちゃんもどんどん強くなって、あの子たちがいる世界まで飛んでいって、一緒に遊べばいいよ。きっと楽しいよ。」と言ってくれる。
そう、次に佳奈子がゾンビーズに出会うのは、佳奈子がもっと成長してから。佳奈子とゾンビーズの次の物語が楽しみだ。いつになるかはわからないけど・・・。

蛇足:表紙のダンスポーズのイラスト、事件後、学校に仲間をつくる佳奈子に、古川日出男の「サウンドトラック」 http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/1889871.html のヒツジコが思い出された。