マーリン1〜魔法の島フィンカイラ

魔法の島フィンカイラ (マーリン 1)

魔法の島フィンカイラ (マーリン 1)

「マーリン1〜魔法の島フィンカイラ」T・A・バロン(2004)☆☆☆★★
※[933]、海外、古代、児童文学、ファンタジー、アーサー伝説

アーサー王伝説の重要なキャラクター大いなる魔法使いマーリンの子ども時代を描いた作品。大いなる魔法使いも子ども時代はあったわけだ。大いなる魔法使いの子ども時代って?。期待して読んだ。
読了。正直、可もなく不可もなく。児童文学のファンタジーとしては、及第かもしれないが、深さがない。調子よく読み進めることができるが、その分、あれ、終わっちゃったという感じ。う〜ん。オススメまではいかない。
アーサー王伝説といえば、近年のファンタジー作品においてモチーフとして取り上げられることの多い作品。キリスト教と、それ以前のケルトの神話が融合し、ファンタジーファンには忘れるわけにいかない作品。その中で、重要な役割を持つマーリンを描いた作品、読まないわけにいかない。

母親を名乗るブランウェンという女性と暮らすエムリス。海辺に一緒に打ち寄せられてから五年が経つ。どこかに自分の本当の両親と、本当の名前があるはず。薬草で人々の傷の手当てをすることを生業とするブランウェインを魔女だと断罪し、火にかけようとした、村の乱暴者で、エムリスをいつもいじめるディナティウス。そのときエムリスは、怒りにまかせひとつのことしか考えられなかった。こいつが焼け死ねばいいんだ!炎に焼かれればいい!
エムリスの思いは、大きな炎を呼び、ディナティウスは炎の吹き上がる大木の下に。ディナティウスの命を助けるために炎に飛び込むエムリウス。
街を出、教会に身を寄せるブランウェインとエムリス。視力を失い、生きる気力を失うエムリス。必要なら二度と魔法は使わないので、エムリスの視力をもどして欲しいと神に祈るブランウェイン。神の贈り物か、力か知らないが、魔法なんかもう使わないと、口走るエムリス。そのとき奇跡が起こった、エムリスの見えない目が第二の目として視力をとりもどした。ふつうの目で見るほどはっきりとは見えず、少しだけ違った視力。
体力をとりもどしたある日エムリスは決意する、自分の父親を探し会いに行く、自分自身を見つけに行く。巣立ちのとき。
現世と神話の国をつなぐ架け橋といわれる魔法の島フィンカイラに辿り着くエムリス。そこでリアという少女に出会う。暴力と恐怖の支配する<死衣城>に住まうフィンカイラの王スタングマー。王の冷たい恐怖の支配は、リアの住むドルマの森を枯れ死病で覆おうとする。何とかしなければ、マーリンという種のハヤブサと、シムという自分は巨人種だと語る小人を旅の供にし、エムリスたちは旅たつ。途中、エムリスの身代わりで捕らえられるリア。リアを助けるために<死衣城>へ向かうエムリスたち。そして、<死衣城>で待ち受ける驚きの真実。エムリスは、リアをそしてフィンカラを救うことが出来るのか。

マーリンの子ども時代を描いた作品だから仕方ないことなのかもしれないのだが、この作品にはアーサー王伝説に繋がる重厚な重さにも似た匂いが感じられない。確かにギリシャ神話や、ケルト神話の片鱗は伺いしれるのだが。現在この作品は3まで刊行されている。この後どういう展開となり、マーリンは大いなる魔法使い成長するのか、楽しみなようで、不安でもある。いたずらに長尺なシリーズになりそうなのが不安。主人公が、アーサー王のマーリンである必然が早く出てくることを期待する。

蛇足:アーサー王伝説をモチーフにした作品で、オススメとしてスーザン・クーパー「闇の戦い」シリーズをあげておきたい。番外編である「コーンウォールの聖杯」から始まり、「光の六つのしるし」「みどりの妖婆」「 灰色の王」「 樹上の銀」に続く。こちらは現代を舞台にした小説。映画化の噂も出ている。間違いなくオススメ!