マーリン2〜七つの魔法の歌

七つの魔法の歌 (マーリン 2)

七つの魔法の歌 (マーリン 2)

「マーリン2〜七つの魔法の歌」T・A・バロン(2005)☆☆☆★★
※[933]、海外、古代、児童文学、ファンタジー、アーサー伝説

自分自身を探すため魔法の島フィンカイラにたどり着き、悪の王スタングマー王を倒すマーリンの冒険を描いた「マーリン1〜魔法の島フィンカイラ」http://blogs.yahoo.co.jp/snowkids1965/12116484.htmlの続編。

物語は、スタングマー王の<死衣城>の滅びた後、集まれる限りの、フィンカイラに生きとし生ける種族が集まる大会議から始まる。議題はフィンカイラの名高い七つの宝の行方をどうするか。以前はすべての民のものとして、自由に分かち合われていたが、そのやり方では盗まれる危険がある。結局はよい守り手が現れるまで、大蜘蛛グランド・エルーサが預かることに。ただひとつ、大地を草木で蘇らせる<花琴>を除いて。スタングマーを操った、悪の神リタガウラのまき散らした<枯れ死病>を癒し、大地を蘇らせるのは<花琴>の力にたよるしかない。とくに<闇の丘>を早く蘇らせなければ、リタガウラが戻ってくる。しかし、<花琴>は、魔術師の心を持った者でしか使いこなせない。
ほかの誰も使いこなせない<花琴>であったが、伝説の大魔術師トゥアーハの孫であり、フィンカイラを救ったマーリンがを奏でると、<花琴>は魔法の力を現した。大地を生きかえらせる使命がマーリンに与えられた。
とりかかったら、おわるまで休んではいけない。闇の丘を生きかえらせ、緑を取り戻すことが、フィンカイラの平和を守ること。
しかし、マーリンは過信とうぬぼれと、だれも自分の力を認めてくれないあせりより、大事な使命を途中でなげうってしまう。そして、母親を魔法の力を借りてフィンカイラの地へ呼び寄せる。マーリンの愚かな行いは、リタガウラの復讐の技<死に影>を呼び寄せ、それは母に取り憑いたのだった。母の命を救うためには、月の満ち欠けが一巡りするあいだに、フィンカイラの七つの魔法の歌の謎を解き明かし、<黄泉の口>で、大魔術師トゥアーハをも倒したひとつ目鬼バロールを倒して、すべての神ダグダより<ダグダの霊薬>を授けられなければならない。
前作に引き続き、フィンカイラの森の娘リアと、新たに陰気な道化師バンヴルウィを仲間とし、マーリンの旅が始まる。マーリンは母の命を救うことができるのか。そして、旅の途中で明かされるリアの秘密。

前作同様、いい意味、悪い意味で児童文学のファンタジー。主人公が過信であやまちを犯し、それを悔い改め、成長する物語。おおかたのファンタジーのパターン(類型)を踏襲している。これに深みを与えるかどうかは作家の腕。残念ながら、深みにまで到達していない。七つの謎は、あっけなく解かれ、そして最後の危機を乗り越え大団円。ある一定の年齢層を対象とした児童文学であるなら及第か。しかし、年齢層を越えた児童文学になりえたかと言えば疑問。七つの謎は多すぎたか、三つくらいならもう少し、深みを与えられたのか。リアの真実と、その行動はちょっとどうかと。陰気な道化師バンヴルウィの同行もいまひとつ納得性に欠けるのでは。

小気味よく進む物語は、厚さ(400ページ)のわりにさくさく読める。昨今流行りの児童向けファンタジーのなかでは、どんぐりの背比べといったところか。全部で5部作だそう。2005年10月現在現在、4巻までが日本では出版されている。映画化も決定、だそう。とりあえず最後までつきあっていこうと思っているが、本当にマーリンは、アーサー王伝説の大魔術師マーリンに成長できるのか。本書では、アーサー王アーサー王をたらしめた、名剣エクスカリバーが登場する。<われはいにしえより今に伝わる光の剣。永遠なる王の剣なり・・>と、本書でその名前は明かされないが。